東京地方裁判所 昭和41年(ワ)7770号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決理由〕一、<証拠>によれば、訴外長谷川安男は元被告会社に勤務していたが、昭和三三年三月独立し、被告から商品を仕入れてアイスクリーム類の卸商を営み、昭和三八年頃からは直接原告と取引するようになつたこと、取引に当つては「新宿福玉支店」または「新宿福玉」と名乗り、「株式会社福玉商店新宿支店長長谷川安男」の名刺を使用し、その店舗には「福玉新宿支店」と表示した看板を掲げていること、右看板は被告において訴外長谷川が雪印乳業との取引をするについて便宜をはかつて被告の支店たる名称を使用することを許諾した結果掲げられたものであること、訴外長谷川が右の如き名称を使用して営業していることは被告において知悉していたこと、以上の事実が認められる。
右事実によれば被告は訴外長谷川が取引一般に関して、被告の名称を使用することを許諾していたと認めるのが相当である。
二、抗弁について判断する。
<証拠>を綜合すれば、昭和四〇年五月頃原告は訴外長谷川の求めに応じて資金を融通してもよいとして、同訴外人と融資に関する種々の交渉をしたが、被告に対してはなんの連絡もしなかつた事実、その際原告の杉並営業所長であつた難波佳成は訴外長谷川から、「この際本店と縁を切りたい」旨聞知している事実、またその頃右難波及び原告会社の常務取締役辻某は訴外長谷川所有の土地家屋の登記簿謄本を見てこれに被告のため抵当権設定登記がなされ、かつ被告を権利者として代物弁済予約による所有権移転請求権保全の仮登記がなされていることを知つたこと、原告は被告との取引にあたり『新宿福玉支店』の分を帳簿上区別して受注や代金請求をしており、かつ代金は訴外長谷川安男個人の小切手または約束手形で受取つていること、『新宿福玉支店』以外の代金は被告会社振出の小切手または約束手形で受取つていることが認められる。
以上の事実に基いて判断するに、これと前項に認定した事実を併せると、未だ以つて原告が「新宿福玉支店」を被告の支店であると誤認していなかつたことまでは認められないけれども、少くとも、昭和四〇年五月頃以降は右誤認について原告に重大な過失があつたものと認めるのが相当である。
しかして、かように原告に重大な過失があつた場合は、名義貸与者たる被告は商法第二三条の規定による責任を免かれると解するを相当とする。(篠 清)